第420回例会(Web#39) 2024.3.30

2024年3月例会チラシ
日本海事史学会 第420回例会(Web#39)

幕末のサムライは、なぜ舟の号を好むのか

講師:岩下 哲典(いわした てつのり・会員)

2024年3月30日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 報告者は、最近「江戸無血開城」に関心を持って研究している。その貢献度を、新政府側は西郷隆盛が最大であり、旧幕府側では山岡鉄舟が「一番槍」、二番手は高橋泥舟、その次が勝海舟と大久保忠寛、その次に和宮・天璋院と考えている。もちろん異論はあると思う。
 ところで、研究を進める中で、鉄舟・泥舟・海舟、ほかに田辺(太一)蓮舟や木村(喜毅)芥舟など、「舟」がつく号がなぜか気になっていた。なぜ幕末のサムライは「舟」を好むのか。そもそも、号とは何か、他にも「舟」を号に持つ人物はいるのか。
 中間報告的なものだが、会員の皆様と有意義な意見交換できたら幸いである。

【講師プロフィール】
岩下 哲典(いわした てつのり・日本海事史学会会員)
1962年信州「たのめの里」生まれ。青山学院大学大学院文学研究科後期課程単位修得、博士(歴史学)。徳川黎明会学芸員、国立歴史民俗博物館客員助教授、明海大学教授を経て、現在、東洋大学文学部・大学院文学研究科教授。
主な著作『山岡鉄舟・高橋泥舟』『江戸無血開城の史料学』『「文明開化」と江戸の残像』『江戸無血開城』『城下町と日本人の心性』『高邁なる幕臣 高橋泥舟』『予告されていたペリー来航と幕末情報戦争』『徳川慶喜』『江戸のナポレオン伝説』など。
「英雄たちの選択」「知恵泉」「ザ・プロファイラー」など出演多数。

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第399回例会(Web#18) 2022.03.26

第399回例会チラシ
日本海事史学会 第399回 例会(Web#18)

精読・船長日記――50種の写本から見えてくるもの

講師:春名 徹(はるなあきら・会員)

2022年4月23日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 尾張の廻船督乗丸は文化10年(1813)初冬に漂流、同12年春にアメリカ船にカリフォルニア沖で救助されるまで、「海上漂流484日という世界の海事史上最長となる壮絶な経験をした。『船長日記』は船頭重吉による経験を三河新城藩の池田寛親がまとめた記録である。それは多様な読みを可能とする漂流記である。この物語の力は語り手(船頭重吉)の経験の壮絶さによるのか、あるいは記録者(池田寛親)の力量によるのか、読者の興味をひくのは海上経験の過酷さなのか、送還にあたったロシア人の極東での動向なのか?
 現存する写本およそ50種を読んでみると、テキスト数種のヴァリエーション、記録の継承の型、写本を共有しようという衝動などが見えてくる。
⦅船長日記⦆というテキストを共有したいという衝動は、幕末の識字率の向上を背景に、在村蘭学、国学と結びつき、幕末型の図書館運動への展望をも内包しているのである。

【講師プロフィール】
春名 徹(はるな あきら) 日本海事史学会会員

南島史学会会員。東京大学文学部東洋史学会卒。東アジアの海域史、特に漂流・漂着に関心がある。
近著は『文明開化に抵抗した男 佐田介石 1818-1882』(藤原書店)。専攻とは全然、関係ない。


第390回 例会(Web#9) 2021.06.19

日本海事史学会 第9回 Web例会

「明治時代における軍艦と商船の機関用語について」

講師:佐野 美穂(さの みほ・会員)

2021年6月19日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 日本における近代造船史は、200年以上にわたり江戸幕府が施行した大船建造禁止令が解かれた幕末から明治にかけて幕を開ける。時を同じくして西欧でも、帆船から蒸気船への転換期を迎えていた。事実、日本に開国を迫ったペリー艦隊は、4隻のうち2隻が蒸気軍艦、2隻が帆船という編成であった。日本はその後、昭和初頭に当時世界最大級と言われた戦艦大和を建造するまでに至った。
 遥か先を行く西欧列国に追いつき、追い越すほどの進歩を可能にしたのは、西欧に学んだ新技術である蒸気機関を自国で生産、運用できる人材育成に力を注いだからで、その際、他の分野同様西欧から移入した新技術の専門用語の存在を抜きに語ることはできない。いち早く用語の重要性を認識し、実際に制定を手掛けたのは、軍艦を運用する海軍と、商船を管轄する逓信省であった。
 今までスポットライトが当たらなかった舶用蒸気機関用語が、明治期にどのような経過を経て整えられていったのか、その経緯を史料に基づき能う限り忠実に辿るのが本研究の目的である。

【講師プロフィール】
佐野 美穂(さの みほ・日本海事史学会会員)
船との出会いは、新卒で入社したアパレルメーカーで初めての夏休みに上司にスナイプに乗せてもらい、セールと舵だけで風上にも上っていけるヨットの面白さに開眼したのがきっかけ。
いつか本格的に練習したいと思いつつ20有余年を経た後、自分でも果たしてその意欲に変わりはないか半信半疑で若洲のヨット訓練所に申し込み、以来毎週末通い詰めるほど熱中。教訓・好きなことに年齢は関係ない。
数年後には26フィート木造ヨットのクルーを仰せつかり、小型船舶免許を取得。その講習を受けた海洋大学でバイトをすることになったのが縁で、大学院に社会人入学。専攻は海洋環境保全学。安達先生の全面的バックアップのおかげで、5年がかりでようやくこの春修士修了。