第419回例会(Web#38) 2024.2.24

2024年2月例会チラシ
日本海事史学会 第419回例会(Web#38)

山田武左衛門の漂流日記と「蜀江錦(しょっこうのにしき)」

講師:小林 郁(こばやし かおる・会員)

2024年2月24日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 陸奥船福吉丸は宝暦11年(1761年)に遭難し、清国(中国)長江の河口に漂着。漂流民は翌年、清国船で長崎に送還された。福吉丸の上乗武左衛門(1712~1792)は、漂流・清国旅行中に日記を書いていた。この日記の写本は二本現存するが、内容はかなり異なる。どのような点が違うのかを分析したい。
 また、武左衛門が信仰していた塩竃神社(福島県福島市大笹生)には、彼が奉納した「蜀江錦」と盃が今も伝えられている。「蜀江錦」は、江戸後期の地誌『信達一統志』にも記された由緒ある品。神社関係者の御厚意により、これらを実見する機会を得たので報告する。

【講師プロフィール】
小林 郁(こばやし かおる・日本海事史学会会員)
1964年生まれ。東京都東村山市在住。
江戸から明治初期に漂流を体験した人々に関心があり、
その生涯を調べるため各地を巡っている。

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第399回例会(Web#18) 2022.03.26

第399回例会チラシ
日本海事史学会 第399回 例会(Web#18)

精読・船長日記――50種の写本から見えてくるもの

講師:春名 徹(はるなあきら・会員)

2022年4月23日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 尾張の廻船督乗丸は文化10年(1813)初冬に漂流、同12年春にアメリカ船にカリフォルニア沖で救助されるまで、「海上漂流484日という世界の海事史上最長となる壮絶な経験をした。『船長日記』は船頭重吉による経験を三河新城藩の池田寛親がまとめた記録である。それは多様な読みを可能とする漂流記である。この物語の力は語り手(船頭重吉)の経験の壮絶さによるのか、あるいは記録者(池田寛親)の力量によるのか、読者の興味をひくのは海上経験の過酷さなのか、送還にあたったロシア人の極東での動向なのか?
 現存する写本およそ50種を読んでみると、テキスト数種のヴァリエーション、記録の継承の型、写本を共有しようという衝動などが見えてくる。
⦅船長日記⦆というテキストを共有したいという衝動は、幕末の識字率の向上を背景に、在村蘭学、国学と結びつき、幕末型の図書館運動への展望をも内包しているのである。

【講師プロフィール】
春名 徹(はるな あきら) 日本海事史学会会員

南島史学会会員。東京大学文学部東洋史学会卒。東アジアの海域史、特に漂流・漂着に関心がある。
近著は『文明開化に抵抗した男 佐田介石 1818-1882』(藤原書店)。専攻とは全然、関係ない。


第391回 例会(Web#10) 2021.07.25

第391回例会チラシ
日本海事史学会 第10回 Web例会

「洋学と漂流・漂流記」

講師:松本 英治(まつもと えいじ・会員)

2021年7月25日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 近く思文閣出版より洋学史学会監修『洋学史研究事典』が刊行されます。報告者は、研究篇「洋学の社会的基盤」の一項目として、「漂流と漂流記」を執筆する機会を得ました。執筆では、「漂流と漂流記」を「洋学の社会的基盤」としてどうとらえるか、四苦八苦しました。
 洋学の発展と漂流の関係、洋学者による編纂物漂流記の成立など、執筆に際して考えたことを、大槻玄沢の事績を中心に報告し、会員の皆様のご批正を賜りたいと思います。

【講師プロフィール】
松本 英治(まつもと えいじ・日本海事史学会会員)
開成中学校・高等学校教諭。東洋大学非常勤講師。2020年より日本海事史学会理事。
著書に『近世後期の対外政策と軍事・情報』(吉川弘文館、2016年)。


第387回 例会(Web#6) 2021.03.20

日本海事史学会 第6回 Web例会

「農民の漂流日記 ―上乗の遭難と異国体験―」

講師:小林 郁(こばやし かおる・会員)

2021年3月20日(土祝)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 宝暦十一年(1761年)。奥州福島の城米を積んだ福吉丸は荒浜を出帆後、暴風で遭難した。漂流のすえ、福吉丸は清国の南通州(中国江蘇省南通市)にたどりつく。地元民の手厚い救護を受けた一行は、蘇州、上海を経て日本へ帰ることができた。この事件は、『通航一覧』や石井研堂の『異国漂流奇譚集』によって知られていた。ところが1958年、福吉丸に乗っていた上乗百姓武右衛門(山田武左衛門)の漂流日記が福島市大笹生で発見され、話題となった。2010年には、大笹生笹谷文化財保存会により現代語訳が刊行されている。
 海を遠く離れた山里に暮らす農民は、異国漂流体験をどのように綴ったのか。武右衛門の日記と、今も残る彼の墓石を紹介したい。

【講師プロフィール】
小林 郁(こばやし かおる・会員)
1964 年生まれ。東京都東村山市在住。
江戸・明治期の漂流民にかかわる文書、墓石、位牌、遺品、伝承などを求めて日本各地を巡っている。
著書に『嘉永無人島漂流記』(三一書房)、『松栄丸「広東」漂流物語』(無明舎出版)、『新編鳥島漂着物語』(天夢人)がある。