第392回 例会(Web#11) 2021.09.26

第392回例会チラシ
日本海事史学会 第392回例会(Web例会#11)

第二次戦時標準木造貨物船について
―瀬田勝哉著『戦争が巨木を伐った 太平洋戦争と供木運動・木造船』を読む―

講師:安達 裕之(あだち ひろゆき・会員)

2021年9月26日(日)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 昭和18年1月、戦局の悪化と海上輸送力の緊急な増強に対応して、政府は木造貨物船の大量且つ急速な建造方策を決定して、昭和17年制定の5種の第一次戦時標準木造貨物船を3種に整理した第二次戰時標準木造貨物船の建造に踏み切り、2月から軍需造船供木運動を全国に展開した。
 戦標木造船については橋本徳壽が『日本木造船史話』で取り上げているが、供木運動まで視野に入れて綜合的に論じた研究は瀬田を措いて他にない。しかし、瀬田の研究は画龍点睛を欠く憾みがある。肝心の第二次戦標木造船の像が曖昧模糊としているからである。
 そこで本報告では第二次戦標木造船の実像を提示したい。

【講師プロフィール】
安達 裕之(あだち ひろゆき・日本海事史学会会員)

1947年大阪市生まれ、1972年東京大学工学部船舶工学科卒業、同教養学部に勤務して、2012年に退職。東京大学名誉教授。
専門は日本造船史。
おもな著書:『異様の船-洋式船 導入と鎖国体制-』(平凡社、1995年)


Webサイトをリニューアルしました

会員の皆さまには先にメールでお知らせしましたが、この「日本海事史学会」のWebサイトのリニューアルがほぼ完了しました。「会員通信」も読みやすくしました。
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よろしくお願いいたします!


8月の例会はお休みします

2021年8月の例会は休会とさせていただきます。
あしからずご了承ください。


第391回 例会(Web#10) 2021.07.25

第391回例会チラシ
日本海事史学会 第10回 Web例会

「洋学と漂流・漂流記」

講師:松本 英治(まつもと えいじ・会員)

2021年7月25日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 近く思文閣出版より洋学史学会監修『洋学史研究事典』が刊行されます。報告者は、研究篇「洋学の社会的基盤」の一項目として、「漂流と漂流記」を執筆する機会を得ました。執筆では、「漂流と漂流記」を「洋学の社会的基盤」としてどうとらえるか、四苦八苦しました。
 洋学の発展と漂流の関係、洋学者による編纂物漂流記の成立など、執筆に際して考えたことを、大槻玄沢の事績を中心に報告し、会員の皆様のご批正を賜りたいと思います。

【講師プロフィール】
松本 英治(まつもと えいじ・日本海事史学会会員)
開成中学校・高等学校教諭。東洋大学非常勤講師。2020年より日本海事史学会理事。
著書に『近世後期の対外政策と軍事・情報』(吉川弘文館、2016年)。


第390回 例会(Web#9) 2021.06.19

日本海事史学会 第9回 Web例会

「明治時代における軍艦と商船の機関用語について」

講師:佐野 美穂(さの みほ・会員)

2021年6月19日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 日本における近代造船史は、200年以上にわたり江戸幕府が施行した大船建造禁止令が解かれた幕末から明治にかけて幕を開ける。時を同じくして西欧でも、帆船から蒸気船への転換期を迎えていた。事実、日本に開国を迫ったペリー艦隊は、4隻のうち2隻が蒸気軍艦、2隻が帆船という編成であった。日本はその後、昭和初頭に当時世界最大級と言われた戦艦大和を建造するまでに至った。
 遥か先を行く西欧列国に追いつき、追い越すほどの進歩を可能にしたのは、西欧に学んだ新技術である蒸気機関を自国で生産、運用できる人材育成に力を注いだからで、その際、他の分野同様西欧から移入した新技術の専門用語の存在を抜きに語ることはできない。いち早く用語の重要性を認識し、実際に制定を手掛けたのは、軍艦を運用する海軍と、商船を管轄する逓信省であった。
 今までスポットライトが当たらなかった舶用蒸気機関用語が、明治期にどのような経過を経て整えられていったのか、その経緯を史料に基づき能う限り忠実に辿るのが本研究の目的である。

【講師プロフィール】
佐野 美穂(さの みほ・日本海事史学会会員)
船との出会いは、新卒で入社したアパレルメーカーで初めての夏休みに上司にスナイプに乗せてもらい、セールと舵だけで風上にも上っていけるヨットの面白さに開眼したのがきっかけ。
いつか本格的に練習したいと思いつつ20有余年を経た後、自分でも果たしてその意欲に変わりはないか半信半疑で若洲のヨット訓練所に申し込み、以来毎週末通い詰めるほど熱中。教訓・好きなことに年齢は関係ない。
数年後には26フィート木造ヨットのクルーを仰せつかり、小型船舶免許を取得。その講習を受けた海洋大学でバイトをすることになったのが縁で、大学院に社会人入学。専攻は海洋環境保全学。安達先生の全面的バックアップのおかげで、5年がかりでようやくこの春修士修了。


第389回 例会(Web#8) 2021.05.22

日本海事史学会 第8回 Web例会

「雛型から見た弁才船船型要素の時代的変遷」

講師:小嶋 良一(こじま りょういち・会員)

2021年5月22日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 江戸から明治にかけての海運で大きな役割を担った弁才船(べざいせん)、いわゆる千石船は時代とともにその船型を変えていきました。
 今回、どの船型要素が時代とともに変化していったのかを国内に現存する弁才船の雛形計測の結果から統計的・定量的に調査検討した結果を報告します。重回帰分析の手法によって、船型要素のパラメータから製作年代が推定可能か否かも探ってみました。
 くわえて、雛形の主要寸法といくつかの木割書から得られるそれらについて比較し、その妥当性について検討した結果も報告します。

【講師プロフィール】
小嶋 良一(こじま りょういち・日本海事史学会会員)
昭和23年東京生まれ。
昭和49年に日立造船㈱に入社。以後各種船舶や海洋構造物の設計に従事。
現在は関西設計㈱顧問、日本船舶海洋工学会ふね遺産認定実行委員会委員長。
大阪市海洋博物館「なにわの海の時空館」(閉館中)の菱垣廻船「浪華丸」の復元設計を担当。また船の科学館叢書「徳島城博物館阿波藩御召鯨船『千山丸』」や「雛型から見た弁才船(上・下)」(安達裕之著)の調査・計測図作成も担当した。


第388回 例会(Web#7) 2021.04.24

日本海事史学会 第7回 Web例会

「16世紀末~17世紀初頭のスペインとポルトガルにおける船殻の設計と建造」

講師:山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

2021年4月24日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 掲題の両国における造船が最も活発な時代に、船殻が実際にどのように設計され、建造されたかが出来るだけ具体的に思い浮ぶように当時の文献に基づいて紹介したいと思います。

【講師プロフィール】
山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)
1968年現在の日本製鉄に入社。
海外への技術、機器、製品の輸出を中心とした業務に就く。
スペイン、ブラジル、メキシコに滞在。1973年に当会に入会。
海外では「国際海事技術史会議」参加メンバー。
16-17世紀のスペインとポルトガルの造船史と航海術史が主たる関心分野。


第387回 例会(Web#6) 2021.03.20

日本海事史学会 第6回 Web例会

「農民の漂流日記 ―上乗の遭難と異国体験―」

講師:小林 郁(こばやし かおる・会員)

2021年3月20日(土祝)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 宝暦十一年(1761年)。奥州福島の城米を積んだ福吉丸は荒浜を出帆後、暴風で遭難した。漂流のすえ、福吉丸は清国の南通州(中国江蘇省南通市)にたどりつく。地元民の手厚い救護を受けた一行は、蘇州、上海を経て日本へ帰ることができた。この事件は、『通航一覧』や石井研堂の『異国漂流奇譚集』によって知られていた。ところが1958年、福吉丸に乗っていた上乗百姓武右衛門(山田武左衛門)の漂流日記が福島市大笹生で発見され、話題となった。2010年には、大笹生笹谷文化財保存会により現代語訳が刊行されている。
 海を遠く離れた山里に暮らす農民は、異国漂流体験をどのように綴ったのか。武右衛門の日記と、今も残る彼の墓石を紹介したい。

【講師プロフィール】
小林 郁(こばやし かおる・会員)
1964 年生まれ。東京都東村山市在住。
江戸・明治期の漂流民にかかわる文書、墓石、位牌、遺品、伝承などを求めて日本各地を巡っている。
著書に『嘉永無人島漂流記』(三一書房)、『松栄丸「広東」漂流物語』(無明舎出版)、『新編鳥島漂着物語』(天夢人)がある。


第386回 例会(Web#5) 2021.02.28

日本海事史学会 第5回 Web例会

「オモキ造りの構造とその技術
 ―富山県氷見地域のドブネを中心に―」

講師:廣瀬 直樹(ひろせ なおき・会員)

2021年2月28日(日)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

かつて日本海沿岸地域に色濃く分布していた造船技術がオモキ造りである。オモキ造りとは、船底板の左右両端に刳材オモキを組み込んだ構造をいい、ウルシによる接着や木製接合具であるチキリとタタラの使用など、特徴的な接合技術が付随する。今回の報告では、近年まで活躍したオモキ造りの漁船のうち、最大級の船体を持つ富山県氷見地域のドブネを一例として、オモキ造りの船体構造の特徴とその造船技術について検討を加える。

【講師プロフィール】
廣瀬 直樹(ひろせ なおき・会員)
1977年富山県生まれ。専門は考古学・民具学。平成13年度より氷見市立博物館の学芸員を務める。平成15年、氷見市内の船大工とともに和船建造技術を後世に伝える会を結成し、調査・研究を行う。平成23年、「富山の和船~富山湾沿岸地域とその周辺の海船・川舟~」で第25回日本民具学会研究奨励賞を受賞。現在、氷見市立博物館主査(学芸員)。