第430回例会(Web#48) 2025.4.26

日本海事史学会 第430回例会(Web#48)

ポルトガルの黒船―1580年のフェルナンド・オリヴェイラ「ナオ船の建造の書」―

講師:山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

2025年4月26日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 2006年4月の例会において「16世紀ポルトガルの奇才・冒険家フェルナンド・オリヴェイラ―『ナウ船の建造の書』の著者―」を発表してから20年近くが経ち、漸くこの「ナオ船の建造の書」(以後「建造の書」と称する)全文の翻訳が完成したので、その内容を中心に報告したい。
 オリヴェイラは波乱に富む生涯を過ごしたが、晩年に「建造の書」を著し、その自筆本がリスボンの国立図書館に保存されている。その内容は、船の設計が中心ではあるが、木材、瀝青(黒船の名称の由来)等にはじまり、船の建造に関して広範に及んでいる。文章は明快であり、また何枚もの図面が挿入されている。

    【講師プロフィール】
    ■山田 義裕(やまだ よしひろ・日本海事史学会会員)
    1968年に早大政治学科を卒業し、現在の日本製鉄に入社。スペイン、ブラジル、メキシコに滞在。
    1973年に当会に入会。海外では「国際海事科学史会議」参加メンバー。
    16-17世紀のスペインとポルトガルの造船史と航海術史が主たる関心分野。

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    第429回例会(Web#47) 2025.3.29

    2025年3月例会チラシ
    日本海事史学会 第429回例会(Web#47)

    第2次世界大戦後の海運環境の変化と
    武力紛争法への影響

    講師:浦口 薫(うらぐち かおる・会員)

    2025年3月29日(土)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

     国際法の形成は、その当時の国際環境の影響を受け、とりわけ、武力紛争法の発展は成立当時の軍事科学技術の発展状況と切り離して考えることができない。海戦法規は帆船の時代の国家実行の蓄積を通じて徐々に形成され、1856年のパリ宣言と1909年のロンドン宣言を中核とする慣習法として結実した。しかし、帆船は動力船に切り替わり、貨物を船倉に直接積み込んでいた貨物船はコンテナ船が中心となり、近年では無人運航船の実現が目前に迫っている。このような現実に対して、「時代を超越した規則(Timeless Rules)」とも評される海戦法規が上手く対応できたのか、また、これからも上手く対応していけるのかについては疑問が残る。本報告では、第2次世界大戦後の海運環境の変化として、特に顕著といえる貨物のコンテナ化と商船の大型化、便宜置籍船の増加及び無人運航船の登場に焦点を当て、それらが海戦法規に及ぼした影響を分析する。

    【講師プロフィール】
    ■浦口 薫(うらぐち かおる・日本海事史学会会員)
    防衛大学校国際関係論学科卒業後、海上自衛隊入隊。防大総合安全保障研究科前期課程修了(山﨑学生奨励賞受賞)、同後期課程満期退学。2020年に大阪大学より博士号(国際公共政策)授与。潜水艦部隊、統合幕僚監部等での勤務や中曽根平和研究所主任研究員等の研究活動を経て、現在、防大国防論教育室准教授(2等海佐)。
    著書:『封鎖法の現代的意義』(大阪大学出版会、2023年)(猪木正道賞奨励賞受賞)。
    論文:『海事史研究』第81号に「第二次世界大戦後の海運環境の変化と海戦法規への影響」の寄稿があるほか、多数の査読論文あり。
    学会報告:「海上封鎖の現代的意義」国際法学会への報告、2022年9月等。
    専門:海洋安全保障、国際法(特に海戦法規、海洋法)。
    所属学会:日本海事史学会、日本防衛学会、国際法学会、世界法学会、防衛法学会、国際安全保障学会等。

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    第428回例会(Web#46) 2025.2.22

    2025年2月例会チラシ
    日本海事史学会 第428回例会(Web#46)

    伊丹諸白下り酒
    ~源流からたどる弁才船の航跡~

    講師:高見 昌弘(たかみ まさひろ・会員)

    2025年2月22日(土)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

    清酒発祥の地 伊丹から江戸へ、往時の航路を追体験。2024年10月20日~11月3日
     セーリングヨット愛好家と日本酒を愛する市民ボランティア有志が企画。遂行を振り返る。
     2025大阪・関西万博を盛り上げようと関西の海で活動するヨット仲間が集った「なにわの海の交流会」と菱垣廻船「浪華丸」がきっかけで「源流からたどる」をキーワードに菰樽に入れた清酒を運んでみた。

    • 兵庫県伊丹市~陸路~舟運~酒問屋の守護神 新川大神宮(東京都中央区)へ
    • 蔵元から出した清酒を可能な限り往時のルートで運ぶ
    • 波に揺られた樽酒は美味しくなるのか

    【講師プロフィール】
    ■高見 昌弘(たかみ まさひろ・日本海事史学会会員)
    1958年生。兵庫県伊丹市在住。
    なにわの海の交流会 伊丹諸白下り酒プロジェクト実行委員会委員長。
    1993年より大阪市セイルトレーニングシップ、帆船「あこがれ」にボランティアスタッフとして参加。初めて帆船による活動をする中、大阪大学名誉教授、野本謙作先生の帆走理論などセイリングに関する講演を聴講。
    1998年、野本先生と日立造船堺工場へ、建造中の浪華丸を見ながら説明をうける。後に帆走実験の実現に向け乗組員の確保などを手伝う。1999年の帆走実験に自身も乗船した。
    その後、浪華丸の1/3試作船を山車として2013年から港の賑わいに活用。また、2017年5月ヨット・サザンクロス号の協力を得て大阪港開港150年を記念し「風まち港、菱垣廻船の航跡」ほか江戸から明治にかけての海を追体験する航海を企画して実施。弁才船、菱垣廻船をテーマに浪華丸の保存と展示を目指し活動を続けています。

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    第426回例会〔対面開催〕 2024.12.21

    2024年12月例会チラシ
    日本海事史学会 第426回例会〔対面開催〕

    明治初期の造船技術者に関する一考察
    ~緒明菊三郎と緒明造船所を中心に~

    講師:中尾 光一(なかお こういち・会員)

    2024年12月21日(土) 14:30~16:30(開場 14:00)
    東京大学駒場キャンパス内 駒場ファカルティハウス(セミナー室)
    (Zoom参加は会員のみ)

     緒明(おあき)菊三郎(1845-1909)はヘダ号の七大工頭・緒明嘉吉(1802-1872)の息子で、父親の手伝いでヘダ号建造にも関与したとされる造船技術者である。明治16(1883)年には共同運輸会社に協力する造修補給の施設として品川第四台場を借り受けて緒明造船所を開き、明治20年代には海運業にも参入、明治38(1905)年には木造船としては国内最大の第27観音丸(1897トン・全長85m)を自社船として建造するなど、造船・海運では大きな存在になるが、娘婿である緒明圭造(1867-1938)の代に造船業から撤退したせいかその詳細は明らかではない。
     そこで本報告では緒明造船所の建造船や菊三郎の所有船などを調査するとともに、隅田川の一銭蒸汽で儲けたなどの菊三郎の逸話についても検証していきたい。

    【講師プロフィール】
    ■中尾 光一(なかお こういち・日本海事史学会会員)
    1975年大阪府生まれ。花園大学文学部史学科(近現代史)卒業。同大学院修士課程修了。現在は花園大学文学部日本史学科助手。
    主要論文は、「海軍艦政局創設に関する一考察 ―初代局長伊藤雋吉を中心として―」(『花園大学文学部紀要』2020年)、「幕末から明治初期における造船技術者に関する一考察 ―緒明菊三郎と緒明造船所を中心として―」(『花園史学』2023年)など。

     非会員の方もお申込なしでご参加いただけます。直接会場へお越しください。 


    例会後、近くの居酒屋で忘年会を開催します!

    【事前申込制】懇親会 17:00~(例会終了後)

    会場:居酒屋「さわやか」
    〒153-0041 東京都目黒区駒場1-27-1 TEL:03-3481-0638

    • 会場予約の都合上、懇親会は事前のお申込みをお願いいたします。
    • 懇親会費はワリカンです。非会員もご参加いただけます。

    お申込みは
    こちらのフォームから

    申込締切
    2024年12月17日(火)23:59


    第425回例会(Web#44) 2024.11.23

    2024年11月例会チラシ
    日本海事史学会 第425回例会(Web#44)

    新綿番船と新酒番船の性能について

    講師:小嶋 良一(こじま りょういち・会員)

    2024年11月23日(土・祝)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

     江戸中期から幕末にかけて、新綿番船や新酒番船が運航されその速さが競われたといわれている。石井謙治『和船1』(1)によると新綿番船の速い船では上方と江戸間を50時間あまりで走破したという記録がある。平均船速7ノット(約13km/h)ということになる。また新酒番船でも早いものでは2.4日で到達した(約6.1ノット)としている。
     しかしこのためには、平均12m/s程度の風速が必要である。常時このような風速が確保できたのか、その風速によってその船速が生み出せたのが疑問の残るところである。またそのような風が発生した場合には相当な波浪や船体運動も生じたはずであるが、関連する細かな記録も残っていない。
     ここでは、このような疑問に対して、工学的な立場から検討してみたい。

    【講師プロフィール】
    ■小嶋 良一(こじま りょういち・日本海事史学会会員)
    1948年生まれ。横浜国立大学工学部造船工学科卒、1974年日立造船(株)堺工場入社。以後、タンカー、バルクキャリアー、石油掘削リグ、大坂菱垣廻船復元設計、浮体式風力発電設備などを担当。現在、船舶海洋工学会ふね遺産認定委員実行委員会委員長。海事史学会、海事技術史研究会理事。関西設計(株)顧問。

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    第424回例会(Web#43) 2024.10.26

    2024年10月例会チラシ
    日本海事史学会 第424回例会(Web#43)

    三浦按針は英国通商成立までの十三年間、何をしていたのか

    講師:鈴木 かほる(すずき かほる・会員)

    2024年10月26日(土)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

     国学院大学『国史学』239号に掲載された論考、即ち、三浦按針は英商通商の成立までの十三年間、何をしていたのかについて言及します。
     三浦按針をテーマとした書物は多く出版されていますが、その内容は英商通商の成立以降の家康と三浦按針との関係を述べたものしかありません。今回発表する内容は、三浦按針は英商通商が成立するまでの十三年間、何をしていたのか、この十三年間の彼の行動の空白を埋めることによって、何故、家康が三浦按針を外交顧門として重用したのか、その理由について言及します。

    【講師プロフィール】
    ■鈴木 かほる(すずき かほる・日本海事史学会会員)
    国家公務員特別職

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    第423回例会(Web#42) 2024.9.28

    2024年9月例会チラシ
    日本海事史学会 第423回例会(Web#42)

    白黒をつける――信長の「鐵ノ船」

    講師:安達 裕之(あだち ひろゆき・会員)

    2024年9月28日(土)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

     天正4年(1576)7月の第一次木津川口海戦で毛利水軍に大敗を喫した織田信長は、伊勢で大船7艘を建造した。天正6年7月に堺に着岸した信長の大船について、奈良興福寺の多門院英俊は日記に「鐵ノ船也、テツハウトヲラヌ用意、事〻敷儀也」と書き留めている。
     英俊の記事に依拠して信長の大船を鉄甲船とする通説に対して、英俊の記事は伝聞にすぎず、太田牛一も堺で大船を実見した宣教師オルガンチノも装甲には一言も言及していないとして提示されたのが、無装甲説、部分装甲説、「異国式の特徴をもつ大船」説であり、今もって結着をみていない。
    ――では、いずれの説が正しいか?

    【講師プロフィール】
    ■安達 裕之(あだち ひろゆき・日本海事史学会会員)
    1947年大阪市生まれ、1972年東京大学工学部船舶工学科卒業、
    同教養学部に勤務して、2012年に退職。東京大学名誉教授。
    専門は日本造船史。
    おもな著書:『異様の船-洋式船導入と鎖国体制-』(平凡社、1995年)

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    第62回総会・特別講演 2024.6.29

    会員の皆様へ

     来る6月29日(土)、第62回総会を駒場ファカルティハウスで開催いたします。
     新型コロナのために2020年3月の例会が急遽中止になって以来、実に4年4ヶ月ぶりの駒場です!
     遠方の方もふるってご参加くださるようお願い申し上げます。

    ※非会員の方も特別講演・懇親会にはご参加いただけます。詳しくはこちら

    ■日時:2024年6月29日(土)
        12:30~13:00 受  付
        13:00~13:30 総  会
        13:50~15:45 特別講演
        16:00~17:40 懇 親 会
    (会費6,000円)
        18:00~    二次会(居酒屋「さわやか」 会費はワリカン)
    ■会場:駒場ファカルティハウス(セミナー室)
      (京王井の頭線東大前駅下車 場所は正門の警備員にお聞きください)
       電話 03-5454-4481(管理室)

    ■■■ 6月22日(土) 14:00までにご出欠をお知らせください。■■■
      日本海事史学会 第62回総会 出欠フォーム 〔会員のみ〕

    ※メールアドレスの変更・新規登録がある方はお問合せフォームからお知らせください。


    日本海事史学会 第62回特別講演

    2024年6月総会特別講演チラシ

    17世紀初頭の英国における造船の諸文書

    講師:山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

    2024年6月29日(土)13:50~15:45
    東京大学駒場キャンパス内 駒場ファカルティハウス(セミナー室)

     16世紀のヨーロッパにおいて、大洋を航海する船の造船の中心はスペインとポルトガルであったが、同世紀の後半にイギリスが急速に両国に追いついた。近世に移行したヨーロッパでは近代国家の国力を左右する交易と戦争を担う船を建造する技術は、職人の世界のみならず、知識人や為政者にも関心が持たれるようになった。進歩する技術を現場に紹介するにとどまらず、海軍上層部、船主、貿易商人達の関心をも満足させる書物が現れた。英国においては、17世紀初頭に書かれた三つの重要な文書(その内の1書はアイザック・ニュートンが手写した直筆)が残されている。それらの文書を、特に船体の設計に焦点を当てて紹介したい。

    【講師プロフィール】
    山田 義裕(やまだ よしひろ・日本海事史学会会員)
    1968年に早大政治学科を卒業し、現在の日本製鉄に入社。スペイン、ブラジル、メキシコに滞在。
    1973年に当会に入会。海外では「国際海事科学史会議」参加メンバー。
    16-17世紀のスペインとポルトガルの造船史と航海術史が主たる関心分野。

     非会員の方もお申込なしでご参加いただけます。直接会場へお越しください。 


    懇親会について

    • セミナー室隣の会場において立食ビュッフェ形式で行います。
    • 会費6,000円は当日会場で申し受けます。現金をご用意ください。
    • 予約の都合がありますので、出欠に変更がある場合は6月25日(火)までに出欠フォームを更新/再入力するか、Web担当へメールでお知らせください。

     非会員の方もお申込みいただければご参加いただけます。 
     詳しくはこちら 


    二次会について

    • 居酒屋「さわやか」で二次会を行います。
    • 会費はワリカンです。
    • ある程度の人数を把握したいので、懇親会の参加申込フォームへの回答にご協力ください。(当日、懇親会の前に出欠を確認いたします)

    第422回例会(Web#41) 2024.5.25

    2024年5月例会チラシ
    日本海事史学会 第422回例会(Web#41)

    朝鮮半島系準構造船加耶タイプの復元と船体構造の検証

    講師:柴田 昌児(しばた しょうじ・会員)・金田 隆(かねだ たかし・会員)

    2024年5月25日(土)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

     朝鮮半島南部、金官加耶国中心部の一角にあり、港湾施設でもある金海鳳凰洞遺跡で出土した3~4世紀の舷側板は、日本産と考えられるクスノキ材で、分析の結果、全長20m、幅2mの大型準構造船を復元することができた。日本には無い船体形状は朝鮮半島南部の船形土器に類例があることから、朝鮮半島系準構造船加耶タイプと呼称した。そして日韓交流・交易における塩鉄木馬論の可能性を指摘した(柴田2022)。
     金田は復元した朝鮮半島系準構造船加耶タイプの船体線図を作成、復原力を計算し、考察した。この成果を受け、柴田と金田は船体構造を分析し、大型準構造船としての有効性を検証する。

    【参考文献】 柴田昌児2022「朝鮮半島系準構造船(加耶タイプ)の生産と日韓の造船技術」『纏向学研究』第10号

    【講師プロフィール】
    ■柴田 昌児(しばた しょうじ・日本海事史学会会員)
    愛媛大学埋蔵文化財調査室 教授。
    論文に「海上アクティビティと高地性集落」『「高地性集落」論のいま』科研基盤(B)成果報告集(2024年)、「準構造船とチキリ、そして外海と内水面交通」『新潟考古』33号、「総論 海に生きた弥生人の多様性と多義性」柴田昌児編『特集 海と弥生文化』月刊考古学ジャーナル763号(以上2022年)、「瀬戸内の海に生きた弥生人」『紀伊半島をめぐる海の道と文化交流』論考集、「西日本の古代木造船と海上における人間活動−瀬戸内海と日本海-」『新潟県考古学会2021年度秋季シンポジウム発表要旨集』、「準構造船と描かれた弥生船団」『青谷上寺地遺跡発掘調査研究年報2020』(以上2021年)、「古代瀬戸内海における海上活動に関する一試論」『みずほ別冊 弥生研究の群像』(2013年)。
    ■金田 隆(かねだ たかし・日本海事史学会会員)
    オクムラボート販売 技術顧問。
    著書に「古代船を復元する」『よみがえる古代船と5世紀の大阪』(1989年、松木 哲氏と共著)。

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    第421回例会(Web#40) 2024.4.27

    2024年4月例会チラシ
    日本海事史学会 第421回例会(Web#40)

    古地図から読み解く江戸湊の発展(その4)
    ~川船の登録と税の取り立てをした川船改番所~

    講師:谷 弘(たに ひろし・会員)

    2024年4月27日(土)
    14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
    Zoomにて開催

     小名木川は、行徳塩を輸送するため、徳川家康が江戸に入府して一番に開いた水路である。しかし、江戸が発展するにつれて、銚子から利根川を遡り、関宿から江戸川を下って物資を江戸に運ぶ「内川回し」水路の一部として重要になった。小名木川の「中川船番所」は有名で、区立資料館まで設けられている。
     しかし、東京都中央図書館が所蔵する「本所猿江亀戸村辺絵図」(1851)を拡大してよくよく見ると、小名木川と大横川交点の三つの橋近くに別の「川船改役所(番所)」がある。中川船番所が、箱根等と同様、「入り鉄砲に出女」取締関所の役割を持っていたのに対して、猿江船改番所は、勘定奉行に属し、川船奉行(川船改役)の出先機関として、水運業を営む船舶を管理するため、船の大きさを測り、川船年貢手形の発行や極印の検査を行うとともに、登録船から年貢・役銀を徴収していた。私も運輸省船舶局検査測度課で同じような仕事をしていたので、大変興味深い所である。

    【講師プロフィール】
    谷 弘(たに ひろし・日本海事史学会会員)

    1963年海上保安大学校本科卒、同大研修科甲修了、海上保安庁、運輸省、総理府、科学技術庁等に勤務。運輸省運輸政策局技術安全課長、科学技術庁原子力安全局次長、国際原子力機関(IAEA)査察情報処理部長、海洋科学技術センター(JAMSTEC)特任参事、日本原子力研究所理事等を歴任。
    著書に「江戸の町造りと船」(文芸社)、「千石船の湊を訪ねて」(芸立出版社)、「海洋開発技術ハンドブック」(共著 朝倉書店)、「全面核実験禁止条約とその発効に向けた準備作業」(JAERI-Review)等。

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