第410回例会(Web#29) 2023.4.22

2023年4月例会チラシ
日本海事史学会 第410回 例会(Web#29)

欧米における船の考古学的発掘、保存、レプリカの建造

講師:山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

2023年4月22日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 欧米では古い船が何隻も良好な状態で、水中で発見されている。発掘された船の多くは博物館において見ることができるが、保存処理には長い時間がかかっている。しかし、保存のために敢えて元の場所に埋め戻された例もある。様々なレベルのレプリカが建造されている。
 今回の発表ではカリギュラ船、バイキング船に始まって、ヴァーサ号、サン・ファン号に至る代表的な例を、スライドショーと動画を多用して紹介したい。

【講師プロフィール】
山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

1968年に早大政治学科を卒業し、現在の日本製鉄に入社。スペイン、ブラジル、メキシコに滞在。
1973年に当会に入会。海外では「国際海事技術史会議」参加メンバー。
16-17世紀のスペインとポルトガルの造船史と航海術史が主たる関心分野。

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第409回例会(Web#28) 2023.3.25

2023年3月例会チラシ
日本海事史学会 第409回 例会(Web#28)

尾州小野浦(愛知県知多郡美浜町)廻船の歴史 序論
―「久住*」一統との関係をさぐる―

講師:樋口 茂生(ひぐち しげお・会員)

2023年3月25日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 報告者の地元小野浦は廻船業で有名であり、寛文末期~文政前期(1671-1822)の知多郡では、大野、半田、師崎に次ぐ廻船数を誇っていたが、古文書が未発見のため、内海の戎講等に比べ研究は極めて不十分であった。そこで、客船帳・石造物・地籍図等により小野浦廻船の痕跡を足で探索した。その結果、日本海側5港の客船帳に小野浦廻船の記録があり、船主中に久住(船印有)を認めた。その足跡は金毘羅宮玉垣(同船印有)・和田神社燈籠でも確認でき、地元小野浦の地籍図・土地台帳でも久住籍(同船印有)を含め確認した。さらに、「久住五左衞門」を含む3件の古文書を発見した。現段階では全てではないが、小野浦廻船(中須にも注目)は「久住」一統の集団を支える役割を担っていたと推定される。
 知多廻船史研究は海事史学会諸先輩が先鞭をつけたものである。これに感謝しつつ報告し、ご批判を請う。

 〔*注〕「久住」は「江戸店持伊勢商人」のひとり。

【講師プロフィール】
樋口 茂生(ひぐち しげお・会員)

千葉県の元環境系研究者。

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第408回例会(Web#27) 2023.2.18

2023年2月例会チラシ
日本海事史学会 第408回 例会(Web#27)

幕末長州藩の海事志向と渡辺蒿蔵
―松下村塾から造船の道―

講師:牛見 真博(うしみ まさひろ・会員)

2023年2月18日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 長州藩の渡辺蒿蔵(天野清三郎、1843-1939)は、吉田松陰の松下村塾で学び、志士として活動した後、海外留学し造船を学んだ。帰国後は工部省に入り、明治7年には官営長崎造船所第二代所長(後に長崎造船局初代局長)となり、近代造船業の礎を築いた。
 その背景としての幕末長州藩における吉田松陰をはじめとする海事志向を踏まえながら、志士から造船の道に進んだ渡辺蒿蔵への影響を含めて概観したい。

 

【講師プロフィール】
牛見 真博(うしみ まさひろ・会員)

1976年生まれ。立命館大学文学部卒業後、山口県の高校教諭として奉職。勤務の傍ら、山口大学大学院博士課程修了。博士(学術)。
著書に『長州藩教育の源流―徂徠学者・山県周南と藩校明倫館―』(溪水社、2013年)。現在、大島商船高等専門学校教授。

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第407回例会(Web#26) 2023.1.28

2023年1月例会チラシ
日本海事史学会 第407回 例会(Web#26)

兵庫縣漁業慣行録を読む―打瀬網盛衰記

講師:大谷 和夫(おおたに かずお・会員)

2023年1月28日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 明治22(1889)年に県によって刊行された「兵庫縣漁業慣行録」は兵庫県下の明治維新前後の漁業の実態を明らかにしたもので約2000 枚の報告書である。その中に、源頼朝や徳川家康の漁業への優遇として打瀬網の開発がある。打瀬網はその方法として帆を掲げ風を受けて横向きに船を滑らせるという画期的なものであり、本書ではその隆盛と明治期に入ってからの衰退について記している。
 また、大阪湾奥部の岸和田市や、播磨灘沿岸部に広がる鹿ノ瀬という浅海では漁場紛争が多数あったことから、その経緯についても報告する。

 

【講師プロフィール】
大谷 和夫(おおたに かずお・会員)

兵庫県庁の元水産技術系職員

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第406回例会(Web#25) 2022.12.17

2022年12月例会チラシ
日本海事史学会 第406回 例会(Web#25)

クレードルによる進水の歴史
―そしてヘダ号、開成丸、戦艦武蔵

講師:山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

2022年12月17日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 昔も今も進水は造船の中で最もクリティカルな工程である。そのリスク軽減のためにクレードルが使われ、17世紀のイタリア、ポルトガル、スペインにおいてその図像と解説が現れた。18世紀以降は、主にフランスと英国の書物の中で、それらの特徴と進化の過程を知ることが出来る。日本では幕末に、失った船の代船としてロシア人の指導の下にヘダ号を建造した時に始めてクレードルの使用を学んだ。仙台藩の開成丸の進水の図にもそれが認められる。これらを紹介し、最後に最大の戦艦であった武蔵の進水に話を及ばせたい。

 

【講師プロフィール】
山田 義裕(やまだ よしひろ・会員)

1968年に早大政治学科を卒業し、現在の日本製鉄に入社。スペイン、ブラジル、メキシコに滞在。
1973年に当会に入会。海外では「国際海事技術史会議」参加メンバー。
16-17世紀のスペインとポルトガルの造船史と航海術史が主たる関心分野。


第405回例会(Web#24) 2022.11.26

2022年11月例会チラシ
日本海事史学会 第405回 例会(Web#24)

弁才船の船体と上廻りの変遷

講師:安達 裕之(あだち ひろゆき・会員)

2022年11月26日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 慶長期の『厳島遊楽図屏風』(東京国立博物館蔵)に登場して以来、明治時代まで弁才船は国内海運の主力として活躍した。船体の基本構造こそ変わらなかったものの、3世紀の間に船体と上廻りは様々に変化した。パリの図面集(F.E.Paris, Souvenirs de Marine, vol.6)に載る明治21年(1888)の1500石積弁才船の淵源が『厳島遊楽図屏風』の船にあろうとは誰も思うまい。
 本報告では弁才船の船体と上廻りの変遷を概観することにしたい。

 

【講師プロフィール】
安達 裕之(あだち ひろゆき・日本海事史学会会員)

1947年大阪市生まれ、1972年東京大学工学部船舶工学科卒業、同教養学部に勤務して、2012年に退職。東京大学名誉教授。専門は日本造船史。
おもな著書:『異様の船-洋式船 導入と鎖国体制-』(平凡社、1995年)


第404回例会(Web#23) 2022.10.22

2022年10月例会チラシ
日本海事史学会 第404回 例会(Web#23)

山高五郎画伯の作品と生涯

講師:飯沼 一雄(いいぬま かずお・会員)

2022年10月22日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 『図説 日の丸船隊史話』(至誠堂、1981年)の著者としても知られる山高五郎(1886-1981)は、明治生まれの造船技師で、晩年には母校東京大学の船用電気工学担当講師も務めました。また日本海事史学会の発起人の1人として『海事史研究』創刊号(1963年)には「本会の発足を祝って」と題した祝辞を寄稿しています。
 幼少期から絵画の基本を日本画家の野口幽谷に学びましたが、作品の多くは記録としてのスケッチで、「船に関しては、間違って描かれていれば三文の評価もない」と断言して一切の誇張や虚飾を排し、細密・丁寧、実物の船の姿を忠実に描き続けました。
 本報告では、2021年11月に静岡市で開催された「船と海とともに―山高五郎の船舶画―」展の図録論稿を執筆した立場から、山高五郎の作品と、海と船を愛し続けた95年の生涯についてお話しします。

 

【講師プロフィール】
飯沼一雄(いいぬま かずお) 日本海事史学会会員

昭和29(1954)年 東京に生まれる。航空月刊誌編集部を経て船の科学館に勤務、現在は嘱託で学芸部調査役(学芸員)。


第403回例会(Web#22) 2022.09.24

2022年09月例会チラシ
日本海事史学会 第403回 例会(Web#22)

日本船舶海洋工学会の「ふね遺産」について

講師:小嶋 良一(こじま りょういち・会員)

2022年9月24日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 

 平成29(2017)年に日本船舶海洋工学会は創立120周年を迎えるにあたり、「ふね遺産」認定制度をスタートさせました。
 我々の暮らしに大きく関わってきたにもかかわらず、その性質上、「ふね」は役割を終えると忘れ去られてしまうことが多い状況です。そこで歴史的で学術的・技術的・社会的に価値のある船舟類およびその関連設備等を「ふね遺産」として認定し、社会にひろく周知することをその目的としました。
 今年までに42件の「ふね遺産」を認定しましたが、今回は認定実行委員として参画しております講演者からその概要を報告させていただきます。

◆日本船舶海洋工学会 デジタル造船資料館「ふね遺産」
 https://zousen-shiryoukan.jasnaoe.or.jp/funeisan/

 

【講師プロフィール】
小嶋 良一(こじま りょういち) 日本海事史学会会員

昭和23年東京生まれ。
昭和49年に日立造船㈱に入社。以後各種船舶や海洋構造物の設計に従事。
現在は関西設計㈱顧問、日本船舶海洋工学会ふね遺産認定実行委員会委員長。
大阪市海洋博物館「なにわの海の時空館」(閉館中)の千石積級菱垣廻船「浪華丸」の復元設計を担当。また船の科学館叢書「徳島城博物館阿波藩御召鯨船『千山丸』」や「雛型から見た弁才船(上・下)」(安達裕之著)の調査・計測図作成も担当した。


第402回例会(Web#21) 2022.07.30

2022年07月例会チラシ
日本海事史学会 第402回 例会(Web#21)

非核兵器国の原子力潜水艦建造計画 苦難の歴史

講師:谷 弘(たに ひろし・会員)

2022年7月30日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 現在の原潜保有国は、核拡散防止条約(NPT)の核兵器国(米英仏露中)と核実験を実施し経済制裁を受けたインドの6ケ国である。しかし、非核兵器国の原潜建造問題は、NPTが検討されていた1960年代から存在していた。初期段階ではイタリアとオランダが関心を持っており、1987年には、カナダが原潜小艦隊の取得計画を発表したがいずれも実現しなかった。
 また、NPT加盟国でなかったブラジルとインドにも原子力潜水艦問題が起こった。インドは、1974年の核実験実施により経済制裁を受けたが、1988年にロシアからリースの形で原潜提供を受け実現したが、ブラジルはアルゼンチンとの軋轢もあり、現在も建造造船所の整備段階である。
 北朝鮮は、金正恩総書記が昨年年頭に発表した重要計画の中に原潜計画も入れており、韓国も計画検討中といわれ、懸念されている。このような中で中国を念頭に、2021年9月に米英豪の新たな防衛協力「AUKUS」が発表され、オーストラリア初の原潜配備支援が決められた。さらに、これらに加えて、ウクライナ問題も発生し、日本でも与野党を問わず原潜議論が始まっている。

【講師プロフィール】
谷 弘(たに ひろし・日本海事史学会会員)

1963年海上保安大卒、海上保安庁、運輸省、総理府、科学技術庁に勤務。
1992年国際原子力機関(IAEA)査察情報処理部長就任、1997年日本原子力研究所理事。
著作:「全面核実験禁止条約(CTBT)とその発効に向けた準備作業」(JAERI-Review)、「原子力船むつ計画から改役まで」(日本海事史学会誌)、「千石船の湊を訪ねて」(芸立出版)等。


第401回例会(Web#20) 2022.06.18

第401回例会チラシ
日本海事史学会 第401回 例会(Web#20)

移民船航海における感染症再考

講師:根川 幸男(ねがわ さちお・会員)

2022年6月18日(土)
14:00~16:00(ルームオープン 13:30)
Zoomにて開催

 多くの人びとを乗せて世界の海域を往来する船舶は、病原体との接触領域でもある。とりわけ、戦前日本のブラジル移民船は、三等エリアに移民を詰め込んだ三密状態で、香港、サイゴン、シンガポール、コロンボなど熱帯域に寄港し、時に感染症クラスターを発生させた。
 移民船の感染症発生についてはいくつかの論考があるが、本報告では、1928年のはわい丸コレラ事件に注目し、移民船航海における感染症の実態と歴史的意味について再考したい。

【講師プロフィール】
根川 幸男(ねがわ さちお)日本海事史学会会員

1963年大阪府生まれ。サンパウロ大学大学院修士課程修了、総合研究大学院大学論文博士(学術)。元ブラジリア大学文学部准教授、現在国際日本文化研究センター特定研究員。専門は移植民史。
おもな著書:『ブラジル日系移民の教育史』(みすず書房、2016)、『移民がつくった街サンパウロ東洋街―地球の反対側の日本近代』(東京大学出版会、2020)。